東京高等裁判所 平成9年(ネ)3760号 判決 1998年11月26日
控訴人
興亜火災海上保険株式会社
右代表者代表取締役
辰馬輝彦
右訴訟代理人弁護士
中田明
同
松村幸生
同
田島正広
被控訴人
協和海運株式会社
右代表者代表取締役
木下純一
右訴訟代理人弁護士
中村哲朗
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人は、控訴人に対し、金一三三八万五六七一円並びに内金四五四万八四六二円に対する平成五年九月一四日から、内金一〇六万七一八三円に対する同年一一月五日から、内金五二一万二七九二円に対する同年一二月一六日から及び内金二五五万七二三四円に対する平成六年三月一日から各支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
三 仮執行宣言
第二 事案の概要
次のとおり付加訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決五頁一行目の「四九万〇八七五キログラム」の次に「、コンテナ三三本分。ただし、当初荷揚港が神戸とされていたコンテナ一一本分のうち荷揚港が横浜に変更された八本分と、当初から横浜とされていたコンテナ二五本分とを併せたもの」を、同四行目の「〇〇六七」の次に「(コンテナ一一本分)」を、「〇〇六八」の次に「(コンテナ二五本分)」をそれぞれ加える。
二 六頁三行目の「二九万七五〇〇キログラム」の次に「、コンテナ二〇本分」を加え、同一〇行目の「合意により変更になったものと思われる。」を「変更された。」に改める。
三 七頁五行目の「三五万七〇〇〇キログラム。」の次に「ただし、コンテナ合計三二本分のうちの二四本分。」を加え、同八行目の「一部」を「八九二五袋、三一万二三七五キログラム、コンテナ二一本分」に改める。
四 八頁七行目の「一一万九〇〇〇キログラム」の次に「、コンテナ八本分」を加える。
五 一〇頁二行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「右争点については、損害の発生時期は損害の発生原因如何に係り、かつ、被控訴人の責任の有無に影響するので、争点①は争点③及び④と関連するものということができ、争点③について争点④が問題となり、争点④が肯定される場合に、争点②が問題となるという関係にある。」
六 一五頁四行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「本件損害のうち濡損は、貨物の水分が蒸発、上昇し、それがコンテナ内で結露して水滴となり、コンテナ積貨物の上部、周囲、底部に濡損を起こしたケースであって、このような損害発生メカニズムでは、内部の濡損のないフィッシュミールの水分値が当初より低下するのは当然のことであるから、証人池田の証言及び太協物産株式会社(以下「太協物産」という。)」の製品分析結果(甲三一)は、船積時の貨物の含有水分を示しているとはいえない。」
七 一六頁四行目の「二九〇一五二〇」を「二九一〇五二〇」に改め、同一〇行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「(三)本件貨物であるフィッシュミールの水分含有率は、平均七パーセント、最大限一〇パーセントであって、適正な含有水分であり、過剰水分という事実はない。このことは、甲二四及び証人池田の証言のほか、フィッシュミールの加工業者の太協物産の製品分析結果(甲三一によれば、9.86パーセント)からも明らかである。
本件損害の大部分は、コンテナ内の床、天井、壁に生じた結露が原因となって生じた損害であるところ、過剰水分が原因となった場合は、およそ温度も高く、換気の可能性も考えられないコンテナ深奥部の貨物に甚大な被害が発生するはずであり、少なくとも、コンテナの接触面に損害が集中したりせず、コンテナの部位全体に散在するかたちで損害が発生するはずであるが、本件では、コンテナ深奥部ほど貨物の安全率が高いのであり、フィッシュミールの含有水分が高く、しかも品質が一定でないとしたら、このような損害発生態様にはならないはずである。航海中の極めて大きな温度差が本件損害の主たる発生原因である。」
八 二二頁四行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「(二)具体的保管・管理義務違反
水分含有率が一〇パーセント以上であるからといって、通気性のないコンテナで運送しても安全であるとはいえず、フィッシュミールが一般的に温度・湿度管理について積極的な対処をしなくてはならない貨物であることは、運送人にとっての常識となっており(甲二九)、運送に当たっては換気と温度設定に配慮すべき義務があるから、水分含有率最高一〇パーセントという表示を盲信し、何ら危険に対する対処措置を取らずに本件貨物を運送した被控訴人の責任は明らかである。
また、本件貨物の焼損の原因となったのは、濡損同様十分な換気と温度管理がされなかったため、運送中に温度が上昇したからであり、被控訴人により適切な通風と温度管理がなされなかったことに起因するものである。」
九 二二頁五行目の「(二)」を「(三)」に改め、二三頁三行目の末尾に「なお、船主からコンテナ輸送船による運送のために提供されるコンテナは、「運送品を積み込む場所」として、法五条一項三号の堪荷能力担保義務の対象となるものである。」を加える。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。
二 フィッシュミール及び本件貨物の損害の発生状況並びに本件損害の発生原因(争点③)についての認定判断は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」一ないし三記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二五頁一〇行目の「本件貨物のフィッシュミールの場合、」を「本件貨物に係わるフィッシュミールは、パゴパゴのスター・キスト・サモア社で製造されたもので」に改め、同一二行目の「その袋を」の次に「本件運送のために運送人である被控訴人からあらかじめ提供された」を加え、二六頁一行目の「した。コンテナは、」を「した(シッパーズ・パック)。前記コンテナ専用船は、船倉及び甲板に貨物(コンテナ)を積載する構造のものであり、船倉は、外気とは一応遮断されている上、船側はタンク、船底は二重底になっている関係で直接海水温の影響を受けない構造となっており、通風装置があって場所による温度差は少ないところ、本件貨物の入ったコンテナは、いずれも」に改め、同五行目の「五頁、」の次に「乙五、」を、「乙六の一から四」の次に「、証人澤谷、弁論の全趣旨」をそれぞれ加える。
2 三四頁四行目の「争いのない事実」を「前記第二の一の争いのない事実等」に改める。
3 三四頁末行の「九六本のコンテナ」の次に「(本件運送契約に係わるコンテナ八五本のほか、当事者が本訴において運送契約1及び3の契約外としたが、同時に運送されたコンテナ一一本を含む。)」を加え、三五頁二行目の「二〇九〇三三四」を「二〇六二一三七」に改める。
4 三五頁一一行目の「急激に」を削る。
5 三八頁八行目の「後述」を「前記二1(本判決による付加訂正後のもの)認定」に改め、同行目の「損害が」の次に「全く」を加え、同一二行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「これに対し、控訴人は、航海中の極めて大きな温度差が本件損害の主たる発生原因であると主張するが、以上の認定説示、ことに本件貨物の一部にしか損害が発生していないこと、本件運送に係わる航海は、いずれも熱帯地方から赤道を通過し温帯地方にかけて、冬季でない時期に約一か月の期間にわたって行われたもので、その間の船倉内の温度差は長期にわたって緩慢に推移していったと推認され(なお、乙三の一参照)、短期間に急激な温度変化が生じたものではないことなどに照らして、控訴人の右主張は到底採用することができない。」
6 四〇頁五行目から同一〇行目までを次の通り改める。
「②また、甲二四、三一、三三、乙三の一並びに証人澤谷、同池田及び同宇壽山の各証言によれば、貨物3のうち石巻でデバニングされた貨物の濡損したサンプル二個について含有水分の確認をおこなったところ、二〇パーセントであったこと、他方、濡損していない正常な貨物のサンプルの水分含有率は9.86パーセントであったこと、本件貨物に係るフィッシュミールを製造しているスター・キスト・サモア社のプラント自体が旧式で極めて古く、乾燥及び冷却機能も不十分であり、同社製のフィッシュミールは、低蛋白で含有水分率も比較的高く、品質が低いこと、右フィッシュミールを東食から継続的に購入して加工している太協物産では、水分含有率の許容限度を一二パーセントくらいとみていたが、同社製のフィッシュミールには右許容限度を超えるものが少なからずあったことが認められる。なお、右正常な貨物のデバニング時の水分含有率が約一〇パーセントであったことから、本件貨物の船積時の水分含有率が濡損した貨物を含めて同様の数値であったといえないことは明らかである。」
7 四〇頁一二行目の「(前記一2(一)」を削る。
8 四一頁末行から四二頁三行目までを次のとおり改める。
「そして、乙三の一、証人澤谷及び同宇壽山の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、水分含有率がおおむね一〇パーセントを超えるフィッシュミールを本件のようにコンテナ輸送すると、結露による濡損を発生させる具体的な危険があるが、水分含有率がおおむね一〇パーセント以下のフィッシュミールであれば、ドライコンテナに積み付けて輸送するという本件と同様の運送方法によっても、経験上、通常濡損は発生しないことが認められる。」
9 四三頁二行目の「製造」の次に「後の」を、同五行目の「発生した。」の次に「現に、本件損害について被控訴人代理人の依頼を受けて調査した検査員澤谷は、スター・キスト・サモア」社のプラントにおける乾燥、冷却およびクーリング等の施設、設備が古いため、その機能が不十分で、かつ、袋詰めした後のクーリングの期間が短く、そのため、フィッシュミールが十分な水分の発散及び温度の下降の前にバニングされていたことを目撃している。」をそれぞれ加える。
10 四三頁九行目の「パゴパゴ」の次に「は西サモア諸島に属する島で、気候は雨が多いため高温多湿であって、その港」を加える。
三 被控訴人の責任の有無(争点④)について
1 本件損害の発生時期(争点①)について
運送人の運送契約上の債務不履行を原因とする損害賠償請求訴訟において、運送品の損傷(損害)が運送人の債務履行中(運送中)に生じたことの立証責任は、債権者の側にあると解される。
そして、本件では、右に述べたとおり、本件損害のうち圧倒的な割合を占める濡損は、本件貨物が含有する少なからぬ量の水分(これは、主として、製造工程中の乾燥、冷却の不十分による。)それ自体により、あるいは右過剰水分に本件貨物の製造後の工程におけるクーリング不足若しくはコンテナ・ヤードにおける長時間の放置又はこれらの複数の要因が加わったために、コンテナ内に結露が生じ、それによって発生したものである。そして、前期引用に係る原判決第三の三4(一)(本判決による付加訂正後のもの)で検討した諸要因に照らすと、結露による濡損は、もともと水分含有率が高いフィッシュミールがクーリング不足のままコンテナに積み込まれて、当該コンテナがコンテナ・ヤードに放置されていた間に既に発生していた可能性が高く、被控訴人による運送中に障害が発生した蓋然性は低いということができる。
そうすると、本件貨物についての本件損害は、そもそも被控訴人による運送中に発生したものと認めることができないから、被控訴人の損害賠償責任を問うことができないことになる。
ただし、右に述べたとおり、被控訴人による運送中に結露による濡損が発生した可能性もあり得るので、以下、被控訴人による運送中に結露による濡損が発生したとされる場合における被控訴人の責任の有無について検討する。
2 被控訴人の注意義務違反(法三条一項、四条一項)の有無について
前記認定の事実によれば、ドライコンテナは著しく通気性に乏しく、また、保冷コンテナ等とは異なって内部の温度が一定に保たれていないため、貨物に水分が多いと外気温の変化によって結露を生じ得ること、及びフィッシュミールは多かれ少なかれ、ある程度の水分を含んでいることが認められるが、これらの事実は、貨物の運送人である被控訴人において、一般的に知っていたか、、又は当然に知り得べき事柄であるということができる。
ところで、本件貨物はシッパーズ・パックによるものであるから、コンテナ内の貨物の性質、状態を被控訴人において直接確認することはできず、被控訴人は、荷送人の表示した内容を前提として本件貨物の運送を引き受け、これに当たるほかない。したがって、被控訴人は、荷送人の表示した本件貨物の性質、状態を前提とした注意義務を果たせば、一応その責を免れることができるというべきである。
しかるに、前期認定のとおり、荷送人は、本件貨物について水分含有率最高一〇パーセントという表示をしていたところ、水分含有率が一〇パーセント以下のフィッシュミールであれば、ドライコンテナに積み付けて運送するという本件と同様の運送方法によっても、経験上、通常濡損は発生しないとされている。そうすると、被控訴人は、荷送人の右表示に基づき、通常であれば濡損は発生しないという前提に立って本件貨物を運送すればよく、濡損の危険が大きいことを前提として、その損害の発生を予見し、かつ、これを回避すべき高度の注意義務(運送の引き受けを拒否し、別の運送方法を勧めることを含む。)までは負っていないというべきである。
そして、被控訴人は、本件貨物が積み付けられたコンテナを船倉内に積載して運送したところ、船倉内の温度は船舶の構造、通気装置等によりほぼ一定の温度に保たれていたのであるから、運送人として運送品に関する通常の注意義務を尽くしていたと認められる(法四条一項、三条一項)。この点について、控訴人は、船倉内の温度・湿度管理の不十分及び積付場所の不適切を被控訴人の注意義務違反として主張するが、これらがいずれも理由がないことは、以上の認定説示に照らして明らかである。なお、控訴人は、甲二九に基づき、フィッシュミールが一般的に温度・湿度管理について積極的な対処をしなくてはならない貨物であることは運送人にとって常識となっていると主張するが、甲二九は、コンテナ等が開発されていない昭和初期における直積み運送を前提とする魚粉海上輸送者の経験談にすぎず、本件貨物の運送とはその方法等が全く異なるものであり、甲二九に基づき控訴人主張のように認めることはできないから、控訴人の右主張は失当である。
3 特別の免責事由(法四条二項九号)について
本件損害の原因となった結露が被控訴人による本件貨物の運送中に生じたとすると、それは、前述のとおり、水分含有率が一〇パーセントを超えるという本件貨物の性質、状態自体を原因とするものと認めるべきところ、本件貨物の水分含有率が荷送人のした表示に反して一〇パーセントを超えていたことは、法四条二項九号の「運送品の……隠れた欠陥」にあたるというべきであり、かつ、水分含有率が一〇パーセントを超えるフィッシュミールをコンテナで運送する場合には、貨物が濡損することは通常生ずべきことであるから、被控訴人は、法四条二項九号により、本件貨物の濡損について損害賠償責任を負わないと解すべきである。
なお、本件貨物の含有水分のほかに、本件貨物のクーリング不足及びコンテナのコンテナ・ヤードにおける放置等による要因が競合して、貨物の濡損自体が、被控訴人がコンテナの引渡しを受ける前ではなく、被控訴人による運送開始後に至って発生したとしても、本件貨物のクーリング不足及びコンテナのコンテナ・ヤードにおける放置については、運送人である被控訴人が積地のコンテナ・ヤードで引き渡しを受ける以前に生じた原因行為であって被控訴人の責任範囲に属さないから、この場合においては、荷送人が運送人である被控訴人に運送品である本件貨物を損傷のない状態で引き渡したということはできず、右原因行為によると見られる損害は、なお運送中の(運送中に発生した)損害ということはできないというべきであり、この点から被控訴人は責任を負わないというべきである。
4 その他の控訴人の主張について
(一) 控訴人は、輸送用コンテナの保守管理の不十分を被控訴人の注意義務違反として主張する。
しかしながら、被控訴人が床の湿ったコンテナを荷送人に提供した事実は認められないし、仮に、被控訴人が穴のあいたコンテナ等を荷送人に提供したとしても、このことから本件損害が発生したと認められないことは前記引用に係る原判決第三の三5(三)に説示したところから本件損害に係わる責任原因として控訴人の右主張に係る注意違反を認めることはできない。
(二) 控訴人は、ドライコンテナという本件貨物に不適切な運送方法を選択したことを被控訴人の注意義務違反として主張する。
しかしながら、水分含有率が一〇パーセント以下のフィッシュミールであれば、ドライコンテナに積み付けて運送する方法によっても、経験上、通常濡損は発生しないとされていることは前記のとおりであるうえ、乙一、三の一及び証人宇壽山の証言並びに弁論の全趣旨によれば、フィッシュミールを船舶で運送する場合に、船倉に直積みする方法と本件のようにコンテナを使用する方法が考えられるが、積地、積量によってはコンテナによる運送が一般的ないし不可避な場合があり、本件のようなサモアからのフィッシュミールの運送については、コンテナによらざるを得ないこと、安価な商品であるフィッシュミールをコンテナで運送する場合には、ドライコンテナによる運送が常識であり、冷凍コンテナ、保冷コンテナ、通風コンテナ等の特殊なコンテナによる運送(当然に運賃は相当高くなる。)は全く考えられておらず、そうしたケースも皆無であることが認められるから、むしろ本件貨物の運送方法としてはドライコンテナによらざるを得ないというべきであり、控訴人の右主張は理由がない。
(三) 控訴人は、コンテナ内への積付についての配慮不十分を被控訴人の注意義務違反として主張する。
しかしながら、本件貨物はシッパーズ・パックによるものであるところ、水分含有率の高いフィッシュミールを十分なクーリング等をしないままコンテナに積み付けると本件のような濡損が生じ得ることは、本件貨物をコンテナに積み付けた荷送人においても熟知していたものと推認されるから、被控訴人において殊更に控訴人が主張するような指示をすべき義務があるということはできず、コンテナ内への積付に当たって十分なクーリングをし、かつ、必要に応じて乾燥剤を使用したり、貨物が濡損しないように積付の仕方を工夫するなどのことは荷送人の責任においてすべきであるといわなければならないから、控訴人の右主張は理由がない。
(四) 控訴人は、被控訴人のコンテナの提供に堪貨能力担保義務違反があると主張する。
しかしながら、控訴人の右主張は、要するに、被控訴人が欠陥のあるコンテナを提供したこと、ひいては、本件貨物の運送方法としてドライコンテナを提供したこと自体を問題とするものであるところ、これらの主張がいずれも理由がないことは前述したとおりである。なお、法五条一項三号は、「船倉、冷蔵室その他運送品を積み込む場所」を運送品の受入、運送及び保存に適する状態におくことを運送人に対して要求するものであって、コンテナそれ自体は船舶の一部ではなく、運送品をまとめるための一種の容器であり、これが「運送品を積みこむ場所」に当たるということはできないから、いずれにしても控訴人の右主張は採用することができない。
5 焼損についての被控訴人の責任の有無について
本件貨物の一部が自然発火により焼損したことについては、その原因は、酸化防止剤が均等に投与されていなかったために部分的に成分油脂が激しく酸化、発熱したためであり、酸化防止剤の投与は、フィッシュミールの製造者ないし荷送人においてすべきもので、運送人である被控訴人の関知すべき事柄でないことが明らかであり、酸化防止剤が均等に投与されていなかったことは、運送品に隠れた欠陥があったというべきであるから、被控訴人は、右焼損についても右3と同様に損害賠償責任を負わないというべきである。
これに対し、控訴人は、焼損についても十分な換気と温度管理がされなかったことに起因すると主張するが、その理由がないことは前期認定説示によって明らかである。
四 よって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官奥山興悦 裁判官杉山正己 裁判官佐藤陽一)